取ってみてどうだった?東芝社員3人が語る男性育休のリアル
2026/09/18 Toshiba Clip編集部

共働き世帯の増加や働き方の多様化を背景に、男性の育児休業取得は年々広がりを見せている。子育てと仕事を両立するための選択肢として注目が高まる一方で、「実際に取得するとどのような経験をするのか」「仕事との両立やキャリアへの影響はどうなのか」といった疑問を持つ人も少なくない。
東芝グループでは、社員一人ひとりが仕事と家庭を両立しながら能力を最大限に発揮できるよう、育児支援制度の充実や柔軟な働き方の推進に取り組んでいる。また、理解促進のためのeラーニングや育児と仕事の両立支援セミナーなどを通じて、男性を含むすべての社員が安心して育児に参画できる職場風土の醸成を進めている。2025年度の男性育児休職取得率(ライフサポート休暇含む)は83%で、直近5年間で伸長し続けている。こうした後押しもあり、近年は男性育休取得者も増加。育休は、より身近な選択肢として浸透しつつある。
では実際に育休を取得した社員たちは、どのような思いで取得を決断し、どのような日々を過ごしたのだろうか。そして、その経験は仕事や働き方にどのような変化をもたらしたのだろうか。育休を取得した東芝グループ社員3名との対話から、育児と仕事に臨む中で見えてきた、それぞれの気づきや変化を探っていく。
東芝グループの制度を活用し、育休を取得した3名。向かって左から、東芝 半導体営業推進センター 吉田 拓矢氏、東芝 エネルギーアグリゲーション事業部 大塚 尚登氏、東芝 AIデジタルR&Dセンター 後藤 智哉氏。育休の期間を通じて、家庭での役割やこれからの働き方と向き合った。まずは相談から始まった――それぞれの育休取得ストーリー育休取得を決めるまでには異なる事情や考えがある。3人はどのような思いで育休取得を考え、職場とどのように調整を進めていったのだろうか。
吉田「私の場合、妻の再就職活動や、その後の育児体制も考えて育休取得を決めました。子どもの成長をしっかり見たいという思いも強く、当初は1年間の取得を希望していました。上長とも繰り返し相談を重ね、最終的には8カ月間取得することになりましたが、半年以上前から上長に相談を続けながら調整を進めていました」
株式会社東芝 半導体営業推進センター パワー&小信号営業推進部 パワー&小信号デバイス需給計画第一担当 吉田 拓矢氏。パワー半導体の営業推進や後輩育成に携わる。第1子誕生時に約8カ月の育休を取得。パートナーの再就職活動や復職後の育児体制も見据えながら、長期間の育休取得を選択した。後藤「私の部署では以前から男性育休取得者が比較的多く、半年程度取得している方もいました。そのため、育休取得を言い出しにくい雰囲気はありませんでした。私自身も、子どもの成長の瞬間をできるだけ自分の目で見たいと思ったことが大きな理由です。初めてできるようになることや日々の変化を、夫婦で共有したいという思いがありました」
大塚「お二人とは少し違って、私は第1子の時は育休を取得していませんでした。ただ、2人目の時は上の子がまだ小さく、妻だけで育児をするのは大変だろうと思ったんです。両親もすぐ近くに住んでいるわけではなかったので、上の子のケアも含めて育休を取得しようと考えました」
育休取得を決めた背景は三者三様だ。しかし共通していたのは「家族で過ごす時間をしっかり確保したい」という思いだった。一方で、取得期間や業務との両立、職場への相談など、取得に向けて異なる課題にも直面した。
大塚「私が最初に育休を取得した2022年頃は、まだ今ほど取得者が多くなかった時期でした。なので手続きの仕方も分からず、上長に相談後、総務に確認しながら準備を進めた記憶があります。今振り返ると、まずは早めに上長へ相談し、調整を始めることが一番大事だったと思います」
株式会社東芝 エネルギーアグリゲーション事業部 水素エネルギー技術部 大塚 尚登氏。水素関連事業の技術営業や事業企画、プロジェクト管理を担当。第2子誕生時に約2カ月半、第3子誕生時に約2カ月の育休を取得した。新⽣児の育児に加え、上の子どもたちと過ごす時間も大切にしながら育休期間を過ごした。後藤「お客さまがいる仕事でもあるため、引き継ぎ資料を作成し、不在中の進め方を整理しました。グループのために意識していたのは、業務の内容や判断の意図を文章として残しておくことです。何より、取得するかどうかというよりも、『取得する前提で、業務をどう回していこうか』という前提で進められましたね」
吉田「私の部署でも育休を取得する男性メンバーは増えてきていましたが、自分のように長期間取得する前例は多くなかったですね。ただ、早い段階から上長に相談していたこともあり、自然な形で話を進めることができました。最終的には外部から1名をアサインしていただき、その方に業務を引き継ぐ形に。こまめに連絡を取りながら、抜け漏れがないように準備しました」
部署や時期によって状況の違いはあるものの、3人とも口をそろえたのは「早めの相談」の重要性だ。上司やチームとのコミュニケーションを重ねつつ、業務面の調整や引き継ぎを円滑に進めていた。
子どもの成長に寄り添う日々。育児に向き合って見えてきたもの育休取得を決めるまでの経緯は異なるが、実際に育休へ入ってからの経験にもまた、個々の気づきがあった。3人は育休期間をどのように過ごし、どんな出来事が印象に残っているのだろうか。
大塚「新生児だけではなく、上の子たちとの時間を確保することも育休取得の大きな目的でした。妻が生まれたばかりの子どもを中心に見る一方で、私は上の子を遊びに連れて行ったり、一緒に過ごしたりしていました。普段は保育園や小学校があり、なかなかまとまった時間を取りにくいこともあります。上の子たちと過ごせた時間は得難いものでした」
吉田「妻が再就職したこともあって、日中は私一人で子どもを見ることもありました。印象に残っているのは、子どもが胃腸炎になった時です。布団の上に戻してしまい、片付けをしながらスマホで対応方法を調べていると、横で子どもが泣いている。初めてのことで本当に慌てました。育休を取っていなければ経験しなかったかもしれませんが、育児の大変さを身をもって知る機会になりました」
後藤「お二人のお話を聞いていて、本当に子どもによって違うなと思います。1人目の時は出産後しばらく在宅勤務を続けていたのですが、子どもの泣き方が激しく、家にいるのに業務中でサポートしきれないもどかしさがありました。結局、その後育休に入りましたが、『大変な時期は事前には予測できない』と痛感しましたね。そこで2人目の時は長めに取得したのですが、第2子はあまり泣かない子で……子ども一人ひとりに個性があるのだと、あらためて感じたことを思い出します」
株式会社東芝 AIデジタルR&Dセンター エンベデッドシステム技術開発部 エンベデッドシステム技術開発第二担当 後藤 智哉氏。通信機器関連や新規事業に関する開発に携わる。第1子、第2子誕生時に育休を取得し、取得期間は計約3カ月。子どもの成長の瞬間をできるだけ見守りたいという思いから育休を取得し、第1子の経験を踏まえて第2子では取得期間も見直した。育児シーンは家庭ごとに異なる。しかし、実際に子どもと過ごす時間を持ったからこそ得られたものも多かったようだ。予想外の出来事に戸惑いながらも、日々の積み重ねの中でしか得られない気づきが経験として残っていた。育休を通じて、どんなことに気づいたのだろうか。
吉田「取得してよかったと感じるのは、やはり子どもの成長の瞬間に立ち会えたこと。寝返りをした、つかまり立ちをした、一人で歩いた、『パパ』と呼んでくれた――そうした初めての場面をほとんど見ることができました。むしろ私ばかりが見ていて、妻から『なんであなたの時ばかりなの』と言われるくらいでした」
生まれたばかりの我が子を抱く吉田氏。後藤「そうですね。私も上の子も下の子も最初に『パパ』と言ってくれたのはうれしかったです。ただ、その一方で育児を完全に分担しすぎる難しさも感じました。上の子の時は妻が寝かしつけをしていたので、しばらく私では寝てくれなかったんです。2人目の時は私も寝かしつけをするように。毎日少しずつでも関わることで、親子の距離感も変わってくるのかなと思いますね」
大塚「私の場合は、仕事のことを気にせず子どもと向き合える時間ができたことが大きかったですね。仕事をしていると、どうしても翌日の予定や業務のことが頭にあります。でも育休中は、夜泣きで眠れない日があったとしても『明日は仕事だから』と考えなくていい。上の子を含めて、家族全体で過ごす時間をゆったり持てたこともよかったと思っています」
3人の振り返りからは、子どもの成長に寄り添う時間が、家族との関係だけでなく、自身の考え方や価値観にも変化をもたらしていたことがうかがえた。3人ともが、「一度しかない子どもの成長を見届けられてよかった」と語る。育休は単なる「仕事を休む期間」ではなく、家族と共に過ごし、自分自身の在り方を見つめ直す時間にもなったようだ。
育休経験が変えた働き方。支え合う職場への実感育休期間を経て職場へ復帰した3人は、働き方や仕事へのスタンスにも変化を感じている。家庭と仕事の両立を経験したことで得た価値観、そしてこれから育休取得を考える仲間たちへ伝えたいことを聞いた。
吉田「育休中に子どもと長い時間を過ごしたことで、働くことへの目的意識がより強くなりましたね。自分は家族のために働くんだ、と。また、現在は新人メンターも担当していますが、育児を通じて子どもの様子を日々観察していた経験が、周囲の変化に気づく力にもつながっていると感じています。表情を見て、今困っていそうだな、ということなど、以前より状況に気づきやすくなったように思います。」
後藤「私は、時間の使い方に対する意識が大きく変わりました。子育てをすると、自分の予定外の残業や急な予定変更が、そのまま家庭全体のスケジュールに影響するようになります。そこで、できるだけ予定外を減らし、勤務時間内で仕事を終えることを意識しています。家庭も含めて全体を見ながら段取りを考えるようになったと思いますね」
大塚「自分も同じです。子供の対応などで中断されると集中力も途切れるので、できるだけ勤務時間内に効率よく業務を進めることを意識するようになりました。あとはやはり、3人の子どもを育てる立場として、将来のことを考えると仕事も頑張らなければ、という気持ちは以前より強くなりましたね」
生後3週間の我が子を抱く大塚氏。育休を経たことで、3人とも仕事と家庭を切り分けて考えるのではなく、両方を見据えながら働き方を組み立てるようになったという。限られた時間で成果を出すという意識は、復職後の共通した変化だ。最後に、実際に育休を経験した3人が、これから取得を考える社員へメッセージを送ってくれた。
後藤「育休を含めて、東芝の制度面はかなり整ってきている環境です。子育ては本当に予想できないことばかりなので、実際にその時になってみないと分からないことも多い。必要だと思ったらまずは取得を前提に考えてみてほしいですね。育休の取得だけでなく、その後の働き方についても周囲に支えていただいたことで、『この会社ならライフステージが変わっても働き続けられそうだ』と感じています。今度は自分が誰かを支える側になっていきたいですね」
大塚「仕事や家庭の状況によって最適な選択や、ベストな取得期間も違うと思いますが、取得のハードルは思っている以上に低いと思います。まずは上長や周囲に相談してみることから始めてみましょう。自分は育休を取得して本当に良かったですし、上司やチームの皆さんに支えていただいたので、とても感謝しています」
吉田「東芝グループは働き方の選択肢が多い会社です。自分や家族にとってどんな働き方がいいのかを、周囲とも話しながら考えていける。私自身、今振り返ると『取れるなら1年取ってもよかった』と思っています。育休を取らないと見えない世界が確かにありました。
育休を取ることで周囲に負担がかかる部分はあると思います。でも、それをお互い様として支え合える組織であることが大切だと思っています。私自身も支えてもらった立場なので、今度は周囲を支える側として関わっていきたいです。こうして、男性でも育休を取ることがどんどん普通になっていけばと思っています」
育休は個人だけの制度ではなく、職場全体で支え合うことで初めて成り立つものでもある。3人の言葉からは、取得者としての実感と、支える側としての責任感の両方が伝わってきた。東芝グループでは、育休取得を後押しする制度だけでなく、互いに支え合う風土も着実に広がっている。その積み重ねが、誰もが安心して働き続けられる職場づくりにつながっている。

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